私のこの一穴

肩こり・美容・痛みの緩和治療など、様々な症状に対応

みなさんが知らないツボ刺激の効果について、鍼灸師がご紹介します。

「膏肓穴(こうこうけつ)

内野 勝郎

「膏肓穴(こうこうけつ)」は足の太陽膀胱経に属し、その部位は上背部、第4胸椎棘突起下縁(第4・5胸椎棘突起間)と同じ高さ、後正中線の外方3寸に取ります。
 さて、「病膏肓に入る(やまいこうこうにはいる)。」という、ことわざがあります。「膏」とは心臓の下の部分、「肓」とは横隔膜の上の部分のことです。この部位は鍼や湯液(薬)も届かない、体の奥深い目に見えないところで、治療が困難なところといわれます。あるいは、心臓の一番奥に入ってしまった「邪気」を取り除くところともいわれています。
 このことは昔、中国晋の景公が不治の病を患った際に、病の精が二人の童子となって、「膏」と「肓」の間に逃げ込む夢を見たことによります。その後、病の景公は手の施しようもなく、間もなく亡くなったとのことです。これは、『春秋左氏伝・成公十年』にある、中国の故事に基づいています。

ところで、「膏肓穴」は、肩こりや五十肩、統合失調症、呼吸器系の疾患などに効くとされていますが、風邪の予防にも特に効果的です。風邪の引きかけなどに、背中がゾクゾクしたり、寒気がしたりするところは、丁度「膏肓穴」の辺りになります。「風邪は、万病のもと」です。そのようなときには、体を冷さず、お灸などで「膏肓穴」を温めることが、風邪を引かないための一番の予防法になります。
 また、江戸時代の本草学者、儒学者であった貝原益軒の著書『養生訓・巻第一総論上』の一節には、「聖人は未病を治すとは、病いまだおこらざる時、かねてつつしめば病なく、もし飲食、色欲などの内欲をこらえず、風寒暑湿の外邪をふぜがざれば其おかす事はすこしなれども、後に病をなす事は大にして久し。」とあります。この考えは、すなわち「予防医学」であり、現代の医療にも十分に通じるものがあります。

さいごに、「病膏肓に入る」とは一説に、「不治の病に罹る、治る見込みのない病気になること」を意味しています。東洋医学においても、「内欲」や「外邪」に冒されることが、病気の原因としています。また、益軒も著書『養生訓』の中で、風・寒・暑・湿の「外邪」を臆病なまでに恐れ、防がなければ、冒されることは僅かであっても、久病(長患い・慢性病)になる可能性があることを示唆しています。
不治の病に罹る前に、「膏肓穴」にお灸をすえて、体の健康を保ちましょう。